WANDER SHANGHAI

外灘12号 · 中山東一路

旧香港上海銀行ビル

HSBC Building

一棟の銀行に刻まれた、百年余りの上海

香港上海銀行の上海支店から市政府庁舎、そして上海浦東発展銀行へ。実際の写真と歴史年表をたどり、外灘12号の建築と変遷を読み解きます。

古写真から歴史をたどる
2021年に外灘の川岸側から撮影した旧香港上海銀行ビル。右側に税関の時計塔が見える

2021年6月20日

川岸側から見た旧香港上海銀行ビル。中央ドーム、六本の大柱、三つのアーチ入口が黄浦江に向く主立面を形づくっています。

ScareCriterion12 · 画像出典 · CC BY-SA 4.0

建物の概要

着工 / 竣工
1921年 / 1923年1923年6月23日正式開業
設計
公和洋行Palmer & Turner
建築様式
新古典主義対称的な正面、列柱、中央ドーム
当初の用途
香港上海銀行上海支店銀行営業と事務所
現在の用途
上海浦東発展銀行金融サービスと事務所
所在地
中山東一路12号外灘 · 福州路交差点

建築と用途の資料[1] [2] [6] [7]

建物のはじまり

なぜここに建てられたのか

この建物は、もともと銀行の営業と事務のためにつくられました。上海での香港上海銀行の活動は、現存建物よりも古く、1874年には外灘12号の旧建物を購入しています。その後、周辺の土地も取得し、新築のための敷地を広げました。現在の幅広い正面は、19世紀の旧建物の姿ではありません。[1]

1923年の開業式には大勢の見物人が集まりました。銀行のアーカイブは、新館を上海での事業発展の重要な節目と位置づけています。長く使う仕事場であると同時に、都市、顧客、貿易相手に向けた目に見える表現でもありました。[2]

見上げて、近づいてみる

足を止めて見たい三つの細部

ドームから、左右の対称性を見る

道路の向かい側から見ると、入口、列柱、中央ドームが一本の軸上に並び、左右に翼部が広がっています。この軸を下から上へたどると、専門用語を覚えなくても建物の秩序をつかめます。[1] [5]

六本の大柱が複数の階をつなぐ

中央の列柱は複数階にわたって伸び、その下の石造基壇とアーチは重厚さを感じさせます。列柱の両側に並ぶ窓を見ると、壮大な全体構成と日常的な事務室の尺度が、一棟のなかで共存していることがわかります。[1] [5]

玄関ホールには別の色彩がある

石色の外壁の内側には、色鮮やかなモザイクが広がる八角形の玄関ホールがあり、銀行の営業空間につながっています。内部の調査からは、後年見られた白い壁が、必ずしも当初の装飾面ではなかったこともわかります。[5] [6]

2024年に見上げて撮影した八角形ホールのドーム。中央の図柄を色彩豊かなモザイクが囲む

2024年3月28日

八角形ホールのモザイクドーム。修復後の装飾を示す近年の実写で、1923年の室内写真ではありません。

ScareCriterion12 · 画像出典 · CC0 1.0

一棟の建物、さまざまな役割

写真のあいだに広がる歴史

前身の建物から現存する建物へ。写真には撮影年代または出版年代を明記し、確かな画像がない時期は文章で歴史を伝えます。

  1. 1874年

    現在の建物の前に、旧館があった

    香港上海銀行は外灘12号の既存不動産を購入しました。写真の三階建ては旧館時代の建物であり、1923年竣工の新館とは区別する必要があります。[1]

    19世紀後半の香港上海銀行旧館を写した白黒写真。三階建ての建物

    19世紀後半 · Wikipediaでは1886年と表記

    同じ場所にあった旧館。現在のドームと幅広い列柱はまだなく、現存建物の前身を示しています。

    撮影者不詳 · 画像出典 · パブリックドメイン

  2. 1920—1921年

    紙上の立面から、新しい工事現場へ

    1920年には、公和洋行による立面図が新聞に掲載されています。現存建物の工事は1921年に始まりました。設計図と竣工後の写真を並べると、構想と実際の建物を比較できます。[1]

    1920年掲載の旧香港上海銀行ビル立面図。対称的な列柱と中央ドームが描かれている

    1920年1月14日掲載

    公和洋行による立面設計図。The China Pressに掲載されました。設計段階の記録であり、実際に完成した姿とは区別して読む必要があります。

    Palmer & Turner · 画像出典 · パブリックドメイン

  3. 1923年

    6月23日、新館が正式に開業

    銀行のアーカイブには、当日の開業式と集まった人々が記録されています。新館は上海支店の営業と事務の拠点となり、黄浦江に向いた正面入口も外灘の街路風景の一部になりました。[2]

  4. 1920年代

    建物が街の日常に加わる

    近くからは銀行前の馬車や歩行者を、遠くからは建設中の税関に隣接する銀行を見ることができます。外灘のスカイラインは、異なる年に少しずつ形づくられました。

    1927年出版物に掲載された旧香港上海銀行ビルの白黒写真。馬車や歩行者が見える

    1927年出版 · 撮影年不詳

    Shanghai of Todayの第7図版。馬車や隣の建物が、銀行を当時の街の日常へと位置づけています。1927年は出典に記録された出版年です。

    撮影者不詳、A. S. Watson & Co.出版 · 画像出典 · パブリックドメイン

    ほかの歴史写真を見る
    高所から見た古い外灘。香港上海銀行の隣で税関が建設中

    1920年代頃 · 撮影年不詳

    銀行と建設中の税関。年代は画面と出典の説明からの概略判断です。ファイルの2014年という記録を撮影年とみなすことはできません。

    撮影者不詳 · 画像出典 · パブリックドメイン

  5. 日中戦争期

    戦争が建物の使用者を変える

    戦時中は横浜正金銀行が建物を使用し、戦後に香港上海銀行が戻りました。建物の外殻は残っていても、使用者と都市の状況は変化しました。[1]

  6. 1955—1995年

    「市政府庁舎」とも呼ばれた時代

    1955年、上海市政府が旧香港上海銀行ビルへ移転しました。その後数十年にわたり市政府の執務機能を担い、1995年の転出を経て外灘12号は新たな段階に入りました。[4] [1]

  7. 1990年代後半

    修復を経て、再び銀行へ

    上海浦東発展銀行が入居し、修復と設備更新が進められ、ホールのモザイクも再び姿を現しました。入居、改修、修復完了は同じ時点ではありません。資料には1996年、1997年、1998年の記載があるため、ここでは段階として扱っています。[1] [5]

  8. 現在

    使われ続ける建物を、丁寧に読む

    建物は現在も上海浦東発展銀行が使用しています。ドーム、石材、ホールを古写真の街並みと照らし合わせ、何が残り、何が変わったのかを見てみましょう。[7] [6]

現在と見学

街路から建物を読み解く

現在は上海浦東発展銀行(SPD Bank)が使用し、金融サービスと事務所の機能を担っています。銀行の公式ページは所在地を上海市中山東一路12号と記載しています。[7] [6]

どこから見るか
中山東一路の黄浦江側の歩行者空間からは、主立面の全体構成を観察できます。横断施設を利用して近づき、入口や石材の細部を見てください。
内部に入れるか
銀行は営業中です。入館、撮影、見学は現地の管理と銀行の最新案内に従ってください。このページでは未確認の開館時間を掲載していません。
その後に
北側の税関時計塔に目を向け、二つの建物の輪郭を比べてみましょう。さらに外灘を歩けば、異なる年代の立面が見つかります。
地図で所在地を見る ↗

資料確認:2026-10-19 · 現地での見学可否は未確認

上海と世界

一対の銅獅子から、もう一つの都市へ

上海新館の前に置かれた銅獅子は、後に香港の銀行本店の獅子像の着想源となりました。同じ金融機関が異なる港町に建てた建物に、共通して見分けられる象徴が生まれたのです。[3]

現在入口前にあるのは複製です。彫像の歴史と目の前の物を区別すると、この建物における保存、複製、継続利用の関係が見えてきます。[5]

資料と画像の出典

以下の資料をもとに再構成しました。Wikipediaを翻案・要約・翻訳した本文は、CC BY-SA 4.0 で提供します。元記事の執筆者は編集履歴をご覧ください。写真の利用条件は各画像の下に記載しています。

  1. Wikipedia · HSBC Building, the Bund ↗

    基本的な沿革と旧館写真の年代表記。本文は翻案、要約、再構成しています。

  2. HSBC Archives · The grand opening in Shanghai ↗

    1923年6月23日の開業式についての一次史料に基づく説明。

  3. HSBC History · Roaring to Life ↗

    上海の銅獅子の起源と香港の銀行建築との関係。

  4. 上海市民政局 · 外灘の22棟の建築 ↗

    1955年に市政府庁舎へ転用された歴史的背景。

  5. 建築を読む · 色彩豊かなドームと銅獅子 ↗

    上海観光情報の2022年転載記事。構造、修復過程、獅子像の複製を扱います。過去の開館時間は現在の見学案内として用いていません。

  6. Built Heritage · Colourful treasure on Shanghai’s Bund ↗

    旧中国人向け営業ホールの装飾と塗装層を扱う2022年の保存研究。論文中の第三者所蔵の古写真は転載していません。

  7. 上海浦東発展銀行 · ブランド識別管理プラットフォーム ↗

    銀行公式ページに中山東一路12号の所在地が記載されています。観光客の入館可否や開館時間を保証するものではありません。

画像処理と年代について

画像は各写真の下に記載したアーカイブまたは画像出典ページによります。サイズ調整とWebP圧縮のみを行い、元の縦横比を保っています。着色や描き足しはせず、古写真の粒子、ぼけ、スキャン跡も残しています。

旧館写真の1886年という表記はWikipedia記事に基づきます。Commonsのファイル日付は歴史的な撮影日とは限りません。Shanghai of Todayには出典の出版年1927年を用い、税関工事中の街景は概略の年代のみ示しています。1955年から1990年代を扱う、利用許諾の確かな画像は今後の補充を待ちます。